あふれる舞人生

あふれる舞人生

奈子は満員電車で縮んだ

 入口脇のレジで朝食を買った美奈子は、奥の四人掛けの席に腰を下ろした。両手を上げ、大きく足の先まで伸びをした。美奈子が身に着けている黒いカーディガンの網目は、動きに合わせて一直線に並んだ。胸の辺りのピンクのバラの絵柄も大きく広がった去皺紋方法
 窓際に座っている真新しい黒いスーツを着たOLは、目を輝かせて赤い携帯電話でメールを読んでいる。まだ学生の香りが半分くらい残っているようにも見えた。美奈子は四年前の自分に姿を重ね、夢と希望で満ち溢れていた頃を懐かしんだ。
 中央の大きな円卓には、よれよれのスーツを着た数人のサラリーマンが腰を掛けている。皆、眠そうで、ぼうっとコーヒーを飲んでいる。所々から、タバコの煙が上がり、店内は朝靄に包まれるようだった。
そうした光景を眺めながら、美体をほぐす。そこはお気に入りの席だった。店内全体が見渡せ、気持ちも大海原のようになるからだSmarTone 上網
 美奈子はキャラメルラテを飲みながら、頬を大きく膨らませ、ナポレオンパイを味わった。ふわふわのクリームに包まった紅色の野いちごの甘酸っぱい香りが、口中一杯にぷわりと流れる。至福の一時が全身を駆け抜ける。美奈子の朝は毎日そうして始まった。
 スイーツのほど良い甘さが脳細胞の隅々までに行き渡ると、美奈子の寝ぼけた頭は目を覚ました。
 デザイナーは頭の中でイメージを大きく膨らますのが仕事だった。脳をフル回転させる状態を保たないといけない。だから、糖分を補給することは、良いウォーミングアップになる。そう納得することが、朝からスイーツを堂々と頬張る美奈子の大儀名分だったdermes 投訴
 ナポレオンパイを片づけた美奈子は、漸く手に入れた薄ピンクのスタールビーを眺めた。頬を伸ばしながら右手を少し上げ、天井の明かりに透かしてみた。六条の煌きが美奈子の瞳を撫でる。胸中に一粒の幸せが拡散した。喜びの余韻に酔いしれながら、優雅にラテを口につける。その流れを何回も繰り返し、心をピンポン玉のように弾ませ、月曜日の早めの朝を浮き浮きと楽しんだ。
 美奈子は六条の煌きを見るうちに、占いの館の老婆の言葉を思い出した。「彼氏からアプローチしてくるようになる」という言葉だった。